雑草を抜きながら考えた話
ここは緑の国。多種多様な植物が暮らしている。
人間でいう貴族・平民といった身分制度がある。手入れが簡単で見た目が美しい植物は好待遇を受けられる。四季折々の変化が可能な個体はそれはもう大切にされる。逆に、見た目が悪いと命を奪われるというある種残酷な世界だといえる。
観葉植物のように黙っていても水を与えてくれ、無料で美容院のごとくカットをしてもらえる存在を目指して生きている。そうなれるのはごく一部の植物だけだ。生まれた時から、大体運命は決まっている。人間に相手にもされないものや抜かれてしまうさだめだと悲しむものも多い。
しかし、簡単にあきらめない種がある。一般的に名前では呼ばれない植物たち。
そう、「雑草」だ。
雑草たちにも様々な性格がある。根をできるだけ広く伸ばし、効率的に栄養補給をするもの。根は直下型で、地面にしみ込んでいく水を長い時間キャッチしようとするもの。元々この場所に観葉植物として住んでいた者ですよ?という顔をしながら堂々と居座ろうとするもの。なるべく抜かれないように体をトゲトゲさせるものもいる。彼らなりの生存戦略だ。
雑草たちの多様性が非常に面白いと言える。
さて、本日はどの雑草誰が生き残るのかというサバイバル大会が開かれていた。完全に身内の遊びだ。
人間が草抜きを始めたという情報が入ったので、急遽決まったものだ。
最近は天気も良いし温度も高く、仲間たちの数はかなり多い状態で始まった。
仲間が容赦なく抜かれていく。今回の人間は本気のようだ。普段なら後回しにするはずの、根を広げるタイプの雑草を早い段階で抜きにかかっていた。予想以上の本気具合に雑草たちはビビり始めていた。
ここで人間の手が止まる。何かつぶやき始めた。
「これは雑草?でかすぎない?1mくらいあるぞ・・・」
人間は位が高い常緑樹さんと同じくらいまで背を伸ばした雑草界のドンの前で悩んでいた。さすがドン。もはや雑草には見えない。これはドンの優勝か・・・。と思われたのもつかの間、おそろしいほどのパワーで一気に抜かれてしまった。
なぜ分かったのか・・・答えは茎の部分だった。木と雑草では、茎の部分の質感の高級感が全然違うのだ。これはもうみんな全滅で終了かと思われたが、ここで思わぬ伏兵が登場した。
そいつのあだ名はもやしっ子。ぼちぼち背を伸ばすが、非常に細いためそう呼ばれている。あっさり抜かれる候補の一人だった。
人間は、不満そうな顔をしだした。
「まじかよ、根っこ抜けなかったー」
なんと、体の脆弱さが幸いしたのだ。結局、今回のサバイバル大会は全員が抜かれて、もやしっこは根だけ地中に残したまま優勝という形になった。残念なことに、他の全員抜かれてしまったので、誰もお祝いをしてくれなかったのがさみしい。
もやしっこは今回の経験を新入りの雑草たちに自慢することを決意したようだった。
植物たちは今日も住処を探してさまよっている。
それぞれの多様性を生かして種の繁栄を目指している。